山英
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山崎英利のお茶語り 〈山英社長のコラム〉

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9. 秋摘み新茶の開発

肥料屋がお茶屋に転向するということは、そう簡単にいくものではありません。私は大学卒業後にお世話になっていた東京のお茶屋さんでの修行見習いを終えて掛川に戻ったのですが、帰って最初にぶつかった壁がお茶の売り上げを伸ばすということでした。

当時、国立茶業試験場の土壌肥料研究室、病害虫研究室に肥料屋としての立場でよくご相談にうかがっていたので、「お茶を用いて何か新しいことはできないでしょうか」とおたずねしてみました。すると「ふつう農作物は大根でも人参でも収穫した時が一番の需要期なのに、お茶だけは春の八十八夜を中心として5月〜6月に収穫してもすぐ夏の暑さで飲まれなくなってしまい、秋の後半から冬にかけて本格的な需要期を迎える、つまり収穫期と需要期が半年ずれている珍しい農作物です。」というお話をしてくださいました。それなら日本には四季があるから、春と同じような気象条件が揃った秋の日にお茶を摘めば、旬の香りが出て、収穫したてをそのまま需要期に楽しんでいただけるお茶ができるのではないか、そう思いつきその可能性について質問すると、「試験場なので過去のデータは十分あります。チャレンジしてみる価値はありそうですね。とりあえず大事な要素は、太陽の傾斜角度から決まる光束量、昼夜の最高・最低気温の温度差、日照時間、地温の4点でしょう。」とのお答えをいただきました。早速過去のデータを調べていただくと、秋のお彼岸の時期の数日間がこれに該当することがわかりました。このご連絡をいただいた時、中山茶業組合の組合長も同席なさっていたので、すぐに実行してみることになりました。

しかし、春の新茶は3月に新芽が芽吹く頃は太陽の光が弱く、その成長とともに日差しが強くなっていくのに対し、秋のお茶は8月の真夏の光の中で芽吹く、つまり生まれたての赤ちゃんが炎天下で日光浴をするような過酷な環境にあり、しかもその成長とともに日差しは弱くなっていきます。春とは全く逆の状況にある秋の新茶は、作ってはみたものの下級品の味しかせず、やはり自然に逆らうことは無理なのか…とあきらめかけていたところ、中山茶業組合の皆さんから「夏の盛りを過ぎると、日中の暑さはそのままでも急に朝晩の涼しさを感じるようになるので、そこまで三番茶の摘採(てきさい)時期を遅らせ、昼夜の温度差が出てから『わき芽』として新芽を発芽させればどうだろう」というご提案をいただきました。そこで中山茶業組合の皆さんを中心にご尽力いただき、数年間にわたる試行錯誤の末、この栽培方法で見事に春の新茶のような旬の香りのあるお茶ができあがりました。「これはいける」、早速東京の愛国製茶さんへサンプルを持ち込み、日本橋の高島屋さんで秋の催事を打とうということになりました。このお茶の評判がよかったことも手伝って、これを機に30年以上、高島屋さんとのご縁が続いています。

春の新茶に比べて、味、コクといったものは若干軽くなりますが、「秋摘み茶」は秋のさわやかな旬の香りが楽しめます。温かいお茶がよりおいしく感じられるこれからの時期に、摘みたての旬の香りをお試しになってみてはいかがでしょうか。

2012年9月25日